ストーリー製作所(小説?)

紅葉と銀杏(モミジトイチョウ)

紅葉と銀杏(モミジトイチョウ)

―――序章―――


季節は秋


山の妖怪のテリトリーの入口である大きな滝…


そこで一匹の白狼天狗が秋の美しい紅葉を眺めながら、いつもの様に見張りをしていた。





見張りと言っても、古くから畏れられている妖怪の山…


彼女曰く、やり甲斐のある仕事らしいのだが。
普通の人間などはまず侵入して来るはずもないので、傍から見ればただひたすら退屈な仕事である。






彼女は、仕事の息抜きに河童と将棋をする準備をしてたその時…。


「よっ、椛。元気か?」
この辺りに現れる筈のない人間が姿をみせた


この気さくな侵入者は、勿論普通の人間ではない。


黒い三角の帽子を被り、白と黒の服を着た少女は人間の魔法使いである。

空飛ぶ箒に跨り、少し長めのブロンドヘアーをなびかせてこっちに向かってきた。


二人はどうやら面識があるようだ。



椛と呼ばれた白狼天狗の娘は少しムスッとした顔をして
「魔理沙さん、此所から先は侵入禁止だって何回言ったら分かるんですか!?」



どうやら前科がある様だ。


しかし、魔理沙と呼ばれた侵入者は悪気がない顔をして。
「生憎、不法侵入は日常茶飯なんだぜw?」
「そんな事言うなら、それなりの対処をしますよ!!」

椛は大きな刀を抜いて威嚇をした。



魔理沙は慌てて
「そんな怒るなって。
今回は栗拾いに近くまで立ち寄っただけだから、別にそっちに用はないんだぜ?」


妖怪だらけのこの場所にたかが栗拾いだけに立ち寄るなんて普通の人間から考えれば無知で命知らずな行為だ。

それが出来るのも彼女がそれなりの“特殊な人間”だからこそなのだが…


椛は、まぁそれならと刀を絞まって将棋の準備に戻ろうとした。
その時不意に魔理沙が
「そういえば、前から気になってたんだケドさ…」
「?」
「なんでお前だけ刀を持ってるんだ?」

あまりに唐突な質問に椛は少し驚いた。


どっかの半霊庭師は別として。
ほとんどの妖怪は爪や超人的な身体能力を使った体術。
もしくは己の妖力や魔法を使った妖術が主な戦闘法で、(妖怪固有の武器を所持する事はあるが)基本あまり武器はつかわない。

それなのに、なんの妖力も無い。一般的な刀を持っているところに魔理沙は疑問を抱いていた。




「それは…」
椛は言葉を詰まらせた。そして数秒の沈黙の後、
「この刀は…私に剣術を教えてくれた人間の侍のものです。」


以外な答に魔理沙は驚いた。
「ほぇー!
お前に師匠がいたなんて初耳だぜ!」
「まぁ、話す機会もなかったですしね。」
「それにしても。人間が妖怪に剣術を教えるなんて、非常に興味深い話しだな。
時間もあるし聞かせてくれよ。」
好奇心旺盛な魔理沙は、箒から身を乗り出して聞いてきた。



椛は少し考えて。
「分かりました…
これは私が見張り天狗になりたての頃の話しですが―」

椛はゆっくりと語り始めた。


そして物語は数百年前に遡る―――


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